漆 塗師物語
漆が人生を変えた。二十七歳からの職人修業。漆と格闘しながら知った日々使う漆器の美しさと輪島塗の奥深さ。塗師・赤木明登はいかにして生まれたのか。 本書からの一文 1985年、東京日本橋の百貨店での美術画廊。僕は、ここで初めて角偉三朗さんの作品展を見る。会場には漆塗りの椀、鉢、盆、重箱などが並んでいる。あくまでも物質というか、「モノ」なんだけれど、それらには、物質を超えたような何かがあった。 荒々しく漆を塗られた木の鉢が、深い野生動物のようにうごめいている。椀には口が付いていて、今にも喋りだしそうだ。四角の盆が「私はここにいるんだ」と、ドンと座っている。 これはいったいなんと言う事態だ。こいつら、モノなのに生きている。存在感、生命力、そんな言葉でおしまいにしたくないような生き生きとした何かがある。そして、内側から何かを放っているにもかかわらず、すべてが静かなのだ。 目次 偉三郎さんに出会う 習うということ 世界との違和感 空洞を描く 漆職人への道 親方 弟子入り前 弟子に入る 新しい暮らし 著者紹介 赤木 明登 塗師。1962年、岡山県生まれ。1985年、中央大学文学部哲学科卒業、世界文化社入社。1988年、退社し、輪島市三井町へ移住する。1989年、輪島塗下地職・岡本進に弟子入りする。1994年、年季明け後、独立。和紙を用いた独自の漆器づくりを始める。1997年、ドイツ国立美術館「日本の現代塗り物十二人」に選ばれ、2000年、東京国立近代美術館「うつわをみる―暮らしに息づく工芸」に招待出品。ヨーロッパ最大のデザインミュージーアム、ピナコテーク・デア・モデルネ(バイエルン州立応用芸術美術館)に作品が収蔵される。洗練された温もりのある作品が、内外において高い評価を受ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)





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