本書からの一文
田んぼに生きた雑草や小動物たちは、生態的には最も弱者であったが、同時に、身近な自然の多様性を維持するための立役者でもあった。この本で述べる具体性を通して、田んぼや畑の雑草への、さらには日常的な自然への理解と関心をさらに深めていただければと願っている
目次
第1章 田んぼの雑草、キツネノボタンの種分化
雑草と呼ばれる植物たち
キツネノボタンとは、どんな草?
日本の雑草の成立
なぜキツネノボタンの染色体を調べるのか?
日本のキツネノボタンの核型は四つある
それぞれの核型の特徴
日本列島でのキツネノボタンの地理的分布は、どのようにして完成したのか
第2章 屋久島の固有種、ヒメキツネノボタンの誕生
屋久島の成り立ち
幸屋火砕流
ヒメキツネノボタンとは、どんな植物?
ヒメキツネノボタンの染色体
ヒメキツネノボタンの種分化の道筋
第3章 ケキツネノボタンは多型的な複合種、種の起源は複雑だ
ケキツネノボタンの外部形態
ケキツネノボタンとキツネノボタンの生態的な分布
ケキツネノボタンの核型の特徴
朝鮮半島のケキツネノボタンの特異な核型
日本産ケキツネノボタンの核型から
第4章 ツユクサは有史以前にヒトとともに日本列島へやって来た
ツユクサの染色体数
ツユクサ研究のスタート
染色体数の違うツユクサの地理的分布と生態的分布
ツユクサの外見と染色体数
染色体の核型から分化の道筋をたどる
朝鮮半島や中国大陸のツユクサ
日本固有のツユクサ
日本でいちばん多いツユクサ
ツユクサは、稲作とともに日本へやって来た?
栽培型ツユクサ「オオボウシバナ」は、どのようにしてつくられたか?
第5章 マルバツユクサの故郷はアフリカのサバンナ地方
日本でのマルバツユクサの形態
染色体数と核型
マルバツユクサの核型の多様性とその特徴
核型変異と減数分裂、そして種分化との関係は?
マルバツユクサの地理的分布圏拡大の戦略
第6章 圃場整備で田んぼの生き物が変わった
日本の田んぼは多様な生き物の宝庫
圃場整備事業
田んぼの多様性の保全と復元
田んぼはイネのほかに子どもも育てた
著者について
933年 愛媛県松山市生まれ。
1962年 愛媛大学教育学部卒業。理学博士。
高校教諭を経て、鳥取大学教育学部助教授、教授、附属教育実践研究指導センター長(併任)などを歴任し、1999年定年退官。
田畑の雑草の種分化についての生態遺伝学的研究のほかに、附属小学校の教師と共同で五感に働きかける理科授業や、生命の神秘を実感する社会人向けの理科講座などを実践。
本書は、ライフワークとして中国や韓国の研究者と共同で取り組んできた、キツネノボタンやツユクサなど雑草の種分化の機構を遺伝学的・生態学的に解明する研究の現時点での成果をまとめたもの。
よく目にする雑草の染色体から、彼らが日本の風土にどのように適応して生きてきたのかを明らかにするとともに、雑草がもたらす豊かな自然を概観する。
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